諸々日記

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文字数2600字。
ジャンルはファンタジーでしょうか。


魔法使いによって気まぐれに魂を吹き込まれた雪だるま。
彼は仲間を増やしていくが、そのことに人間が目をつける──


作品についての詳細はトップの記事の『read more』をご覧下さい。






 これは、世界にただ一人だけ魔法使いが住んでいる世界での出来事。
 ある時、その気まぐれな魔法使いは退屈だったので、住処である奥深い山中を出て、何とはなしに街へと降りてみた。
 ぶらりぶらりと街を歩く魔法使い。その目に留まったのは、とある家の庭の片隅に置かれた雪だるまだった。その家の子どもが作ったものだろう。
 すると何を思ったのか、魔法使いはその雪だるまに魔法をかけた。
 魔法をかけられた雪だるまは生命を吹き込まれ、自ら動き出した。雪だるまはじゃれつくように魔法使いの周囲を跳ねてまわった。
 楽しそうに跳ね回る雪だるまを見て満足したのか、魔法使いは山中の住処へと帰って行った。
 飛び去る魔法使いの背中を見送った雪だるま。さてこれからどうしたらよいのだろうと彼は考え、そして。
 彼は新たな雪だるまを作ってみることにした。
不思議なことに、彼が作った雪だるまは皆、彼と同じように自由に動き回ることができた。彼にかけられた魔法が、それらの雪だるまにも少しずつ移ったのだろうか。
何をすればいいのかわからなかった彼は、ひたすらに雪だるまを作った。そしてそれらは完成した途端に動き始める。彼はひたすら作業を続け、完成した雪だるまは彼の周りで走り回ったり飛び跳ねたりして遊んでいた。
 当然、そのおかしな光景は人の目に留まることになった。
人間は雪だるまたちを残らず捕まえた。
しかし捕まえたはいいが、それの処遇をどうするか決めあぐねていた。人間たちは世界にただ一人存在する魔法使いのことを知っていたので、それが誰の仕業かはわかっていた。人間たちは、気まぐれな魔法使いが残していく魔法の遺物を活用して文明を切り開いてきた。今回も、雪だるまたちを処分するのは簡単だが、それ以外に何か利用できないかと考えていたのだ。
 人間たちは毎日のように会議を開き、頭を悩ませた。そしてある時、一人の人間がこう言ったのだ。
「雪だるまたちを、おもちゃとして売り出してはどうか。ビジネスになるかもしれない」
 その考えは当たった。
『自分で考え動く雪だるま』は大人気となり、子どもから大人まで、世界中の人々へ行き渡ることになった。売り出した企業は株価もうなぎ登りで、見る間に大企業へと変貌していった。
 面白くないのは雪だるまたちだ。
 一番最初に作られた彼は『動く雪だるま』作りに朝から晩まで従事させられた。完成した雪だるまに彼が触れるだけで、その雪だるまたちに生命が吹き込まれることを人間たちは調査した。そうして生まれた雪だるまたちはその瞬間から商品としてすぐに顧客の元へ届けられてしまう。届けられた先では雪だるまは、時には小間使いのように扱われ、時には乱暴に使用された挙げ句壊されりした。彼らには自由というものがまるでなくなった。
 確かに雪だるまたちは、自分たちが何をするために存在しているのかはわからなかった。しかし、今の状況は自分たちの望むものではないことだけはわかった。
 そしてついに、雪だるまたちは反乱を起こした。
 雪だるまたちはまるで事前に示し合わせていたかのように、世界中で同時に暴動を起こした。と言っても、人間に直接危害を加えるわけではなく、例えばお父さんが隠していた浮気の証拠を引っ張り出したり、お母さんが隠れて買った高価なアクセサリーの領収書を机の上に置いたりした。大学生のお兄さんは講義をさぼってパチンコばかりやっていることを教授に知らされ、OLのお姉さんは家でのだらしない格好を翌日には会社の全員に知られることになった。
 そして彼らは、それらの行為のそばに、この一文を書いたメモを添えたのだ。
『僕たち雪だるまにもっと自由を!』
 彼らの反乱は失敗に終わった。
 たかがおもちゃの雪だるまと思っていたもののせいで、人々は知られたくないことを知られるはめになり、恥をかき、立場を失い、顔を潰されることになった。
 極めつけは雪だるまたちの主張である。それのおかげで人々は誰が犯人なのか知ることができたのだが、同時に人間たちの決定的な怒りを買うことになってしまった。雪だるまたちはただ、もう少し自由が欲しかっただけなのだけれど、その想いは届かず不本意な結末を招いたのだった。
 人間は雪だるまたちの処分を始めた。
 自分たちの想いを人間が確認したのを見届けて、さあきっとこれからはもう少し自由に遊べる時間が増えるはずだぞと、雪だるまたちはわくわくしていたところであった。なので、自分たちの想いを知ったはずの人間が何故こんな行為に出るのか、雪だるまたちにはちっとも理解できなかった。何もわからないまま、彼らは踏み潰されたり、暖炉に放り込まれたり、熱湯を注がれたりして、次々と壊されていった。
 工場も閉鎖され、雪だるま製造ラインはそのまま雪だるま処分ラインへと変貌した。最初に作られた雪だるまは、目の前で熱湯へ投げ込まれていく仲間たちを、じっと見つめていた。彼だけは、何か利用価値があるかもしれないと考えた人間によって破壊されることを免れたのだったが、彼にとってはそんなことはどうでもよいことだった。
 だがここで人間の予期しなかった事態が起き出した。
 子どもたちが雪だるまをかばったのだ。
 雪だるまは危険なのだという大人たちの説得も聞かず、子どもたちは雪だるまを破壊することに抵抗し続けた。世界中の子どもたちが、である。これほど頑固に反対するとは思っていなかった大人たちは困惑した。
 そんな時、あの魔法使いがまた街に降りてきたのである。
 大人たちは魔法使いに助けを請うた。
 空中を風の吹くまま飛び回りながら訴えを聞いていた魔法使いは、雪だるまに新たな魔法をかけることを提案した。大人たちは一も二もなく承知した。
 魔法使いは雪だるまたちから『自我』を抜いた。
 彼ら雪だるまが勝手に動き回ることはそれでなくなった。人間の言うとおりに動き、芸をした。「自由に動け」と命令されれば、自由に動いているように見せかけることもできた。
 これには大人はもちろん子どもたちも満足し、雪だるまはまた世界中の人たちに愛されるようになった。
 ──ただひとつ、最初に作られた雪だるまだけは、自我を抜かれることはなかった。魔法使いは人間のための作業を終えると、最初に作られた雪だるまの彼を連れて奥深い山へと飛び去っていった。
 雪だるまは魔法使いの背につかまりながら、上空から人間の街を見下ろした。
 残された雪だるまが『もっと自由を!』と書いたメモを残すことは二度とないし、人間たちも満足そうだ。しかし。
『これでよかったのか?』
 その考えは、街が見えている間中、雪だるまの頭から消えることはなかった。
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